使い捨てコンタクトをターゲットに
「みんなのスポーツ」「生涯スポーツ」といった言葉を耳にしたことがあるはずである。
そうした動きは1970年代に入るとさらに急速な動きをみせる。
ヨーロッパ会議の「ヨーロッパみんなのスポーツ憲章」、ユネスコの「体育・スポーツ国際憲章」、旧西ドイツの「第二の道」と「ゴールデンプラン」、カナダの「フィットネス・アマチュアスポーツ振興法」、ノルウェーの「トリム運動」、イギリスの「スポーツとコミュニティ」などが代表例としてあげられる。
日本では1960年代後半から国をあげての「体力づくり運動」が叫ばれた。
学校・企業・地域住民を対象としたスポーツの振興が、国家あげての重要な政策となったのである。
「すべての地域住民が、いつでも、だれでも、どこででも、気軽に自分に適したスポーツ活動に親しめる場と機会」3)を与えるのがねらいである。
地域に根ざしたスポーツ活動の体制を確立し、その推進を図ることが、わが国のスポーツ行政の柱になったといえよう。
わが国のスポーツ行政は、文部省体育局が中核となって担当している。
この部局がスポーツ振興の基本計画を定めたり、具体的事業をおこなってきた。
しかし、1970年代中頃になると「幼児から高齢者まで、また健康づくりからレジャーとしてのスポーツまで《みんなのスポーツ〉の対象と内容の多様化」4)と生活福祉重視から、文部省以外の省庁もそれぞれの立場からのスポーツ振興施策を展開するようになってきている。
といっても、どこの官庁がいったいどのようなことをやっているのか、ほとんど知られていないと思うので、以下にざっとあげてみることにする。
国レベルの施策がずいぶんあるのがいまさらながらわかる。
さらに地方自治体もまた、あれこれスポーツ事業を推進している。
都道府県、市町村の教育委員会などが主体となって運営しているようだ。
また、日本体育協会、都道府県体育協会、各種競技連盟、新日本体育連盟、日本レクリエーション協会、余暇文化振興会YMCA、健康・体力つくり事業財団といった民間団体の多くも、それぞれの立場からスポーツ振興に協力している。
このようにわが国の一般国民に対するスポーツの働きかけは、官民一体となって本格的におこなわれるようになってきたといえる。
しかしながら、そのための環境条件は十分整っているとはいえない。
クア・ハウスにみられるドイツのようなキメの細かい施設整備や運用と比較すると、わが国はまだまだ立ち遅れているという他ない。
今日「生涯スポーツ」が広く叫ばれるようになってきた。
スポーツ活動が量とともに質の点からも充実し、地域に着実に根をおろすよう、行政のいっそうの努力を期待したい。
スポーツと施設施設について、もう少し述べる。
国民、つまり一般大衆とか地域住民と呼ばれる人々が気軽にスポーツを楽しむためには、施設が身近なところになくてはならない。
現段階の日本では、まだ十分といえないことは先に述べたとおりである。
日本と比較しやすいドイツを例にとる。
1959年、旧西ドイツではチャンピオンシップスポーツをめざす「第-の道」に対して、一般大衆(国民)総スポーツの推進のための「第二の道」が提唱された。
その達成のために打ち出された施策が、施設建設15カ年計画、つまり「ゴールデンプラン」であった。
この計画が世界に与えた影響は少なくなかった。
結果として、世界各国の「みんなのスポーツ」の振興に、画期的ともいうべき影響をおよぼすことになるのである。
そうした影響を受けたわが国でも、2年後の1961年にスポーツ振興法を制定し、施設の整備が施策の重要な柱として位置づけられるようになる。
だがこの施設整備は、ともすると学校体育や競技スポーツに重点がおかれたきらいがあった。
その後、1972年になって保健体育審議会が「体育・スポーツの普及振興に関する基本方策について」を文部大臣に答申。
表7-1や表7-2などの策定、指針によって地域のスポーツ施設整備が着々と進むこととなった。
具体的にどれくらい急ピッチで進んだかは、「スポーツ施設の整備状況の推移」をみるとよくわかる。
1969年の1万193が1980年には3倍近くの2万9566、1985年には約6倍となったのだから、いかに増えたかよくわかるというものだ。
しかし、現実はまだまだ足りないのである。
もともと公共スポーツ施設が圧倒的に少なかったことに加え、整備基準を満たしていないために、結果としては依然として不足しているのである。
ひとつの理由として、スポーツ人口の急増という側面ももちろんある。
こうなると、既存の施設を有効利用するという方法が考えられてくる。
学校の体育施設を開放するという手段があった。
文部省も「学校体育施設開放事業の推進について」という通達を出し、積極利用を進めている。
そこで、目下のところは既存の施設を利用しながら、新設の施設の完成を待つということになろう。
職場のスポーツ施設を地域住民に開放する体制づくりも進められている。
いずれにしても、早期に施設が完備され、多くの国民が気軽にスポーツを楽しめるようにしたいものである。
スポーツと指導者高学歴が一般化した今日では、学校体育を通してスポーツを経験する人が増えてきたといえる。
だから、常に指導者がいないと活動できないということは少なくなった。
といっても、そうした一方ではスポーツ欲求の多様化や高度化にともなって、的確に対応できる指導者が求められているのも事実である。
先の「みんなのスポーツ」を振興するうえでも、優れた指導者を確保し育成することは、行政施策上からも重要な課題であるといえる。
現在、公的な指導者として制度化されているのは「体育指導委員」である。
これはしかるべき人材を市町村教育委員会が非常勤職員として任命し、地域のスポーツの企画や立案をはじめ、実技指導・アドバイスにあたらせているものだ。
また1975年に発足した「派遣社会教育主事(スポーツ担当)」もそのひとつである。
こちらは、各都道府県が市町村教育委員会の要請に応じて社会教育主事の資格をもつスポーツの専門職員を派遣するものである。
地域スポーツ活性化のための企画立案や指導助言、体育指導委員との協力体制の確立といった活動をおこなう。
それでも、指導者の絶対数は足りないのが現実だ。
著しく不足している。
そうした背景から、独自の指導者養成事業や地域のリーダー登録制度である「スポーツ・リーダー・バンク」事業を推進する地方自治体も多い。
そうした動きにもかかわらず、指導者不足は解消しないので、民間団体の養成するスポーツ指導者に向けられる期待は大きい。
日本体育協会、日本体育施設協会や各競技連盟を含めた民間スポーツ団体の養成する指導者はド地域スポーツの推進に大きな役割をはたしているのである。
1987年、文部省は社会体育指導者の資格付与制度を新しく発足させた。
「地域スポーツ指導者」、「競技力向上指導者」、「商業スポーツ施設指導者」、「スポーツ・プログラマー」といった公認の資格制度だ。
ほぼ同時期に、厚生省が「健康運動指導士」を、また労働省が「ヘルスケア・トレーナー」の指導者育成に乗り出している。
その資格内容や身分などについて、いくつかの問題も残るが、ともかくいろいろな形でスポーツ指導者の育成は進行しているのである。
「スポーツをすることの楽しさ」には大きく2つあるように思う。
その1つは「スポーツをすること自体が楽しい」ということ、もう1つは、うまくなるためや勝つためにそれ相応の努力を払い、「ひとつの目的を達成できた」という達成感を実感する楽しさである。
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